HERMES
2002年12月1日の記録


意外に大人しく、こうやってても咬んできませんでした。

 クスシヘビ(学名:Elaphe longissima)
 分布域:フランス中部〜ヨーロッパ南部、東部、カフカズ地方、トルコ、イラン北部
 全長:最大200cm、通常140cm以下
(以上、ピーシーズ発行『爬虫類・両生類800種図鑑』より)

 
 私が、この蛇の存在を知った時期は正確に覚えていませんが、爬虫類飼育を始める前だった、という気がします。
 ギリシャ神話に登場する医神アスクレピオスの手にする杖(カドゥケウス)に巻き付いている蛇のモデルとして、信仰の対象になっていた、という事で知っていたのだと思いますが。
 爬虫類飼育を始めて、飼ってみたい、とは長らく思っていたのですが、どこかのショップに入荷した、という話も聞かないまま歳月が過ぎていきました。
 どうも、日本国内ではさほど人気も需要もない…ようでした。
 私個人では『飼育したいナミヘビNO.1』だったのですが…
 
 何となく諦めきることも忘れ去ることも出来ずに、脳の片隅にこの蛇の存在を引っかけたまま何年も時は過ぎていきましたが、ある日、この蛇のウクライナCBが日本国内のショップに入荷した、という内容のメールが携帯電話に入りました。
 送り主は、私がWebサイトを開いてから知り合った方、でした。
 早速、ショップのWebサイトを見て、公開されている写真を確認し、添えられていたコメントの
「ギリシャ神話にも、杖に巻きついて登場する、由緒正しき、薬師蛇」に煽られ、休日を待ってそのショップ…『ペポニ』に出かけました。
 そこで、丁度いらっしゃった八木店長に飼い方を聞いたところ、「キングのbaby飼ったことがあるなら飼えますよ」との心強いお言葉で、価格を聞くと、その時の私の手持ちで賄えたので、迷わずその場で購入して連れ帰りました。
(今思えば、何となく口車に乗せられた気もしなくもないですが、私も最初から買う気満々で店に乗り込んでいるので、深く考えないことにします)

 帰りの名古屋市営地下鉄東山線の車中で、名前を考えます。
 
・アスクレピオス→安直。ついでに舌噛みそうで呼びにくい。→×
 ・カドゥケウス→やっぱり安直。いちいち『うちのカドゥケウスがね…』なんて言うのも気がひける。→
×
 
 ちょっと視点を変えてみます。
 このカドゥケウスの杖ですが、医神アスクレピオスに渡る前は、伝令と商業の神、ヘルメスの所有物でした。
 杖に蛇が二匹巻き付いた形なのですが、何故蛇が巻き付いているか、というと、ヘルメスが道端で喧嘩している二匹の蛇の言い分を聞き、仲裁した事がきっかけ、という説があります。
 『伝令』すなわちコミュニケーションを司るヘルメス神らしいエピソードです。
 そこで、ふと思い返します。
 私がこの蛇に巡り会うまでに、随分『コミュニケーション、もしくはそのツール』にお世話になっています。
 (電話やインターネットやメール、といった事柄は、ヘルメス神の管轄でしょう)
 
・ヘルメス→この蛇は♀だ。 → ×
 
・ならば、HERMES(フランス語読みではエルメス) → これなら良さそう。 決定!
 
 ちなみに、スカーフやケリーバッグで有名なブランドのHERMESも元は馬具メーカーで、馬車のモチーフがシンボルマークになっていますが、それも、伝令の神として天を馬車で駆け巡るヘルメス神にあやかって、ではないか、と思います。


とはいえ、あまりいじくり回すと尿まき散らしの憂き目には遭います。

 さて、眺めてみると、何の変哲もない地味な蛇、です。
 まだ幼体なので模様がありますが、成長に従って模様は消失していき、ますます地味になるそうです。
 色鮮やかでもなく、巨大になるわけでもなく、興味深い習性があるわけでもなく、顕著な特徴があるわけでもなく、地味で何の取り柄もない蛇です。
 たしかに、人気も需要も出るはずもないでしょう。

 …しかし。
 私には大いに意味があるのです。
 何といっても『アスクレピオスの蛇』なのです。
 信仰されているのです。
 ヘルメス神に喧嘩を仲裁された蛇なのです。
 カドゥケウスの杖に巻き付いている蛇なのです。
  
 
この蛇を 私が飼わずに 誰が飼う

 こういう心境に填り込めば、至福の境地です。
 その正体が『自己満足』に他ならない事など、私が一番分かっています。
 
 …いいんです。私が満足なのですから。
 他の誰でもない、自分の価値観に従った結果なのですから。


顔は結構可愛いです。ちなみにこの模様、「ヨーロッパヤマカガシ」に擬態しているそうですが、私はその蛇を知りません。

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